2013/04/24

生き残る調剤薬局 ~強力な分析機能、顧客への情報還元~ (meditur insight vol.2より)

処方情報の蓄積とその還元

現在、薬局では、顧客の薬歴(薬剤の処方歴)を管理しているものの、それらを積極的に活用する動きは、それほど活発ではない。しかし、これらの薬局が持つ情報は、非常に有益である可能性を秘めている。これまで、薬の副作用というのは、1種類の薬剤に関するデータはある程度蓄積されている。それは発売までに必要な情報として蓄積されているものと、発売後も蓄積されるものがあるためである。しかし、実際には、1種類の薬だけを飲む患者以外にも、他の薬と一緒に飲む患者もいるだろうし、副作用が起きるのは、何も薬だけに限った話ではなく、食べ物や飲み物との相性もある。そういった膨大な情報を集めることができる立場、患者とのコミュニケーションが取れる最前面にいるのが、調剤薬局の薬剤師であると考えられる。そして、これらの集めた情報を分析し何らかの形で顧客に還元することができれば、明らかな差別化が図れる。


服用中断などの情報収集に対するアドバンテージ

副作用に限らず、他にも興味深い情報が考えられる。処方された薬を途中で飲むことをやめてしまう患者が一定割合存在する。そのとき、どういった薬を、どういった理由で、どのタイミングで止めてしまったのか。このような情報は医者には集まりにくい。「処方してもらったけど、飲むのをやめてしまった」と医者に正直に言える患者は多くない。まして、その理由が「なんとなく効かない気がするから」と言うことができる患者はいないに違いない。でも、そういった情報、薬剤師ならば、比較的収集しやすい。「この前のお薬はどうですか? お困りのことはございませんか?」と聞いてあげれば、「実は途中で飲むのを止めてしまったのです。今回も処方されたけど、飲むべきか悩んでいます。」という話につながる。このような情報を多く蓄積すると、生活習慣病の薬などで離脱していくパターンが見えてくる可能性がある。これらのパターンについて、理由までわかっていれば、処方するときに有効なアドバイスができるかもしれない。


薬局間の体力差がより顕著に

ただ、これらの情報の活用には、1例、2例の話ではまったく足らず、相当な情報を集積していく必要があるため、組織の力が不可欠である。このような観点に立つと調剤薬局チェーンはかなり有利である。システムの整備や、データ蓄積、分析ノウハウ蓄積、すべての面で個人経営の薬局よりも有利な立場にいる。

もしこのような状況が進んでいくならば、個人経営の薬局は淘汰されてしまう可能性が高い。これを脱却するには、調剤薬局チェーンに合流する、もしくは独自のネットワークを構築し同様の分析体制を整えるくらいしかないだろう。

meditur insight vol.2 「調剤薬局の課題と未来」より