2014/03/06

行動スタイルを理解するには

■家具を買いにどこへ行く?

大塚家具、IKEA、無印良品、ニトリ、東京インテリア、百貨店、大型スーパー、などなど。家具屋は様々あり、それぞれ特徴を持って、商品・サービスを提供している。

大塚家具に行く人は自分で組み立てるなんて想像もしていないし、逆にIKEAで買う人は家具が自宅に配送され、設置までお任せできるなんて想像していないはずだ。無印良品に行く人は派手なデザインの家具が欲しいとは思っていないだろうし、ニトリに行く人は海外有名ブランドの高級家具を揃えたいとは思っていないはずだ。

なぜなら、それぞれの店には分かりやすい特徴があるから、その特徴と自分の志向が一致する店を選んでいる。そういう特定の客が来ている店側は、サービスを徹底すればよい。

■なぜ選ばれているのか

クリニックでも、調剤薬局でもいい。なぜ自分のところを選んでもらっているか把握しているだろうか。さらには、患者の期待していることを理解しているだろうか。例えば、調剤薬局では、薬さえ渡してくれれば十分と思っている人もいるし、逆に十二分な説明を聞きたがっている人もいる。また説明を聞きたいのではなく、むしろ話したいことを山ほど抱えている人もいる。

患者の期待はバラバラなのに、すべて同じ対応をしていないだろうか。

自分の調剤薬局が、薬局界の大塚家具を目指しているとしたら、どんな客にも大塚家具流の対応をしていないだろうか。IKEAに行くはずだった人にオリエンタルな超高級家具を勧めても仕方ない。

そもそも調剤薬局間にIKEAと大塚家具ほどの違いがない。みなビジネスモデルが一緒だ。このあたりのことは、かつて弊社レポートの「meditur insight vol.2 調剤薬局の課題と未来」(ダウンロードはこちらから http://www.meditur.jp/our-reports/)でも述べた。選ばれる理由が『立地』だけであれば立地を磨き上げるしかない。でも、立地はなかなか変えられるものでない。これが田舎のバス停であれば、毎晩10cmずつ自宅の前に引き寄せ、1年後には30m動かした、なんて話もなくはないが、バス停と違って、普通、病院は動かせない。

■患者の期待を理解する

ではどうしたらよいか。まず、患者の期待を理解するためにできることを考え尽くす。例えばだが、カウンターのところに、赤・青・緑のボールを置き、処方箋を出すときに一緒にボールも1つ手渡ししてもらうようにする。ボールには、赤:詳しい説明が聞きたい、青:紙を渡してくれれば十分、緑:その他、みたいな意味付けをしておき、料金上の違いが生じるなら、その旨も説明した紙を貼っておく。そのようにしたら、患者も安心して、自分の意思表示をできるのではないだろうか。もちろん、処方内容の確認のため、服薬状況や残薬の確認、ジェネリックの希望などを省略するわけではない。この3色ボールはあくまでも患者の期待を理解するための手段の一例だが、コミュニケーション力の高いスタッフばかりであれば、こんなのは不要かもしれない。ただ、コミュニケーション力が高くないスタッフもいるし、患者のコミュニケーション力はそれこそバラバラだ。本来、薬局だって、ホテルのドアノブに掛ける「DO NOT DISTURB」みたいに、起こさないでね、という意思表示をしてもらうべきだ。今の薬局は、いわばホテルのすべての部屋で午前中にノックし「ベッドメイクしますね」と言っている状態なのだ。ベッドメイクを望んでいる人はいいが、起こして欲しくなかった人はうんざりしているに違いない。ましてやベッドメイクは別料金なんです、と言われたら怒り出す人がいるのは当然のことだ。

薬局だって、クリニックだって、今の業務が当たり前、と思った瞬間から、もう患者の期待を理解しようという意識が薄れてしまう。当たり前を当たり前と思わず、新しいサービスを考えていくことが大事だろう。