2014/09/13

1日10万円の薬(後半)

1日10万円の薬は、お金がある人しか飲めないのだろうか。金の切れ目が命の切れ目になってしまうのだろうか。そんなことを、ソバルディのことをベースに前半で述べた。

後半は、どうすべきなのか、考えてみたい。

無駄遣いを減らすのが先

この1日10万円の薬は世の中の多くの人が使うわけではなく、一部の人であるがゆえに値段を高くせざるを得ない。10万円を1万円、5千円に下げるのは困難に違いない。もし10万円の薬が保険適用できない理由が、財源不足であれば、財源を何とかしようという話が先にくるべきだ。

そこで考えられるのは、多くの人が飲む薬の値下げである。例えばアメリカでは、ジェネリックやPreferred Drugのような「おススメ薬剤リスト」が出ている。自分が加入している保険に応じて、使える薬が制限されていて、仮に先発品を使うのであれば、Preferred Drugとの差額は自己負担しなければならないケースもある。

つまり、日本でも、先発品を使うのであれば差額は自己負担になる、といった制度ができれば、支出は制限できるはずだ。(ただ、医薬品業界の産業育成にはならないので、国力が低下する・・・という意見も出てくることは承知)

さらには、(代替できる薬剤がある場合は)高額な薬剤を保険対象としない、といった判断もあり得る。それが、Formulary Drug Removals Listだ。
www.caremark.com/portal/asset/Formulary_Exclusion_Drug_List.pdf
このCVS caremarkのリストを見ると、ネシーナはダメ(ジャヌビアとかを使ってね)、と書いてある。もしこのリストの薬を使うのであれば、全額自己負担になるから、医者に相談して、変えてもらうようにしてね、と冒頭に書いてある。

さらに2015年1月のリスト(www.hirc.com/sites/default/files/CVSCaremark-2015_Standard_Formulary_Drug_List.pdf)を見てみたら、喘息ではシムビコートが外されている。医師・患者が自由に薬剤を選べる代償が、財政不足につながっているとしたら、このような患者側の協力によって、1日10万円の薬が保険診療で使えるようになることも考えられる。

つまり、現状の自由の代償が、混合診療による金の切れ目が命の切れ目を生み出してしまう可能性があり、患者側も、もっとシビアに節約しなければならない、ということだ。

3割負担なら大して変わらないからジェネリックは使わない。それはそれで結構なのだが、国全体ではバカにならない医療費高騰の原因になっている。例で紹介したアメリカのように、自由を得る代わりに自己負担が伴う、という制度は、混合診療の前に検討してもよいのではないだろうか。

なぜか混合診療の導入を急いでいる政府だが、その前にできることがある気がしてならない。