2014/12/04

限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる

■紹介状は潤滑油

全国各地の病院で同様の傾向が見られることだが、旭中央病院も例外ではなく、外来の待ち時間は長いらしい。待ち時間が長いのは、患者が多すぎるからなのだろう。しかも旭市の住民は30%しかおらず、あとはそれ以外から来ているらしい。この状況を変えるには、国の政策でもあるかかりつけ医の推進、二人主治医制の推進が不可欠と開業医の江畑氏は話されていた。

江畑氏は、これまで開業医と旭中央病院は、「紹介状のやりとりが自由になされていた。これからは、紹介状を潤滑油として活用していくべき」と主張されていた。潤滑油という表現は、非常に考えこまれた言葉だと思う。開業医から病院へ紹介状を介し病院の医療者が円滑に機能し、病院から開業医へ紹介状を介し円滑に医療が継続される。開業医も病院も独立した医師が運営しているが、医療自体は継続するのであって、それには紹介状が重要という考え方と理解した。

さらに旭市の区会長が説明された言葉が非常に印象に残った。(以下、弊社の意訳)
主治医は身の回りのことも相談できるような医師を探すのが重要である。主治医が決まっていれば、紹介状には、これまでの長い経緯を書いてもらう。中央病院の医師は代わる代わる来ており、患者個人個人の長い経緯まで把握するのは難しい。主治医からの紹介状には、そこまで書いてもらうようお願いする。
弊社の意訳で恐縮だが、この発言には、いくら旭中央病院が身近な病院であったとしても、医師ひとりひとりは患者の長い歴史や家族背景までを理解してもらうことは難しい、というかかりつけ医の本質的な価値を示唆していると思う。それを期待する相手はかかりつけ医であることを患者側も理解せよ、というメッセージだったと思う。さらに区会長の言葉は具体的な話に及んだ。
いつもお腹が痛いと主治医に話している時に、これは中央病院に紹介すべきだと判断したとする。そのとき、この腹痛はいつもの腹痛とどう違うか等のきめ細やかな病状を中央病院に説明・配慮をしてもらうためには、かかりつけ医が大事だ。市民がそうしてもらえるように(かかりつけ医という制度を理解し行動を改める)努力しなければいけない
これは全国共通の話だ。かかりつけ医が大事だというのは容易い。しかし、市民が真の意味を理解するためには、この区会長のような市民目線でのメリットを分かりやすい言葉で伝える必要があるだろう。

■医療のみでは対処できない時代が来ている 

地域に根ざしているだけでなく
非常に高度な医療も提供している旭中央病院
千葉県医療担当部長の古元氏は、地域包括ケアという言葉を説明する際、これまでは病気を治すことに主眼を置いており、病院が中心であった、一方、生活習慣病や認知症、介護といった諸問題に対応するには病院だけではなく、地域全体でケアを考えなければならない、それが地域包括ケアの考え方だ、といった主旨のことをおっしゃっていた。

しかし、市民に地域包括ケアの概念を理解させるには、時間がかかるように感じた。それは会場からあがった「医者は疲弊しきっている」という声だ。、連続記事の最後となる明日は、この声に対する考え方と、ある地域で行ったプロジェクトでの弊社からの提言を紹介したい。




(Part.1) 「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市
(Part.2) おらが街の病院は、たまたま大病院だった
(Part.3) 限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる
(Part.4) シビックプライドの醸成には住民の協力が重要