たとえばなし。
教育で考えてみる。中学校と学習塾のアウトカム指標は、似ているようで、多分全く違う。前者は、生徒が無事卒業することを目標としているとしたら、後者は、有名高校への進学率を目標としている。
同じことを薬局で考えてみよう。
門前薬局は、「正確に処方すること」をアウトカムと認識していて、疑義照会や薬歴管理に力を入れている。薬を減らすような取り組み、指導はしていない。一方で、かかりつけ薬局は、患者家族の背景を想いながら、薬を徐々に減らすための指導をしている。もちろん、正確な処方をした上で。
かかりつけ薬局のアウトカムは、患者を支えることがアウトカムになっている。
門前薬局が経済的な側面でダメだから、かかりつけ薬局へ、と舵を切るのは良いが、アウトカムの議論をしっかりやらないと、街のかかりつけ薬局が、門前薬局のような「正確な処方」に邁進してしまうかもしれない。
さらに言えば、門前薬局であっても、患者・患者家族を支えることをアウトカムとして捉え、良い取り組みをしているところもあるはずであり、ステレオタイプ的に、門前薬局=悪、かかりつけ薬局=善、とするのはいかがなものか。
服薬アドヒアランスの向上など、評価される内容の議論がないまま(正確には、ごく一部の人は、その議論をしている)、院内・院外、門前・門内、といった押し問答をするのは、現場の薬剤師は正直、「無駄な議論だ」と思っているに違いない。
中学校と学習塾のたとえ話に戻そう。大前提として、中学校には中学校の役割があり、学習塾には学習塾の役割がある。それを生徒・生徒の親が、主体的に選べる状況にあるのが現状だ。中学校は義務教育であるものの、公立・私立の学校選択の余地は残されている。
公立中学校の先生がイマイチだとしたら、諦めて許容するしかないかもしれない。一方で、学習塾では許容しない人が大半になるだろう。
最後、もう一度、薬局の話に戻す。学校・塾の先生と同じように、薬剤師の技量等が論点になれば、間違いなく、日本の調剤薬局の制度は変わるだろう。今は、おかしな議論が続いてしまっている。しっかりと薬局のアウトカムを定義し、評価できる仕組みを作った上で、その質が悪い薬局を淘汰していく制度が作られるべきだろう。しかし、制度を作るのは容易ではない。非常に時間がかかるだろう。そこで、短期的な解決策として、診療報酬の点数上下により数だけこなす門前薬局への締め付けだ。
詳細はブログへ⇒ http://meditur.blogspot.jp/2015/05/blog-post_22.html
問題は、薬局の場所や医薬分業か否かということではない。場所や医薬分業の違いにより、どのようなアウトカムの差が生じていて、誰の経済的な負担が生じているか、だ。