「薬局にいて、薬を処方してくれる人」、「薬に詳しい人」、「ドラッグストアで白衣を着ている人」。薬剤師といっても、大半の人はこんな印象ではないだろうか。
マイナビニュースに出ていた、薬剤師にまつわる話→リンク切れのため別サイトを紹介 高給なの?薬剤師の興味深い話 - ライブドアニュース。
――薬剤師は給与が良いという話なんですが……。
誰がそんなことを言ってるんですか(笑)。そんなことないでしょう。普通だと思いますよ。先日、近所であるチェーン調剤薬局の「薬剤師募集、年収は新卒600万、経験者650万」というチラシがありましたが。
――今、日本のサラリーマンの年収が400万円ぐらいですから、600万円だったら平均収入以上ですよ!
いや、そこぐらいまでしかいかないってことですよ(笑)。薬剤師で年収1億円とか聞いたことないですもん。「夢がない」とも言えますよ。
出所:マイナビニュース →リンク切れのため別サイトを紹介 高給なの?薬剤師の興味深い話 - ライブドアニュース
「夢がない」という言葉はあまりに悲しい。サラリーマンはみんな夢がないように聞こえてしまうインタビューに思えてしまう。もちろん、薬剤師という職業、夢がないわけではないどころか、日本調剤を創業した薬剤師の三津原博社長は、他の上場企業を差し置いて、非常に高給(報酬総額は6億を超えており、日本調剤の大株主でもある(出所:平成24年度 有価証券報告書))であるくらいなのだから、夢があるように思う。
むしろ、夢がないのは、薬剤師がしている仕事の内容ではないだろうか。誰しも、つまらないけど、やらなければいけない作業や、単調・単純だけどミスは許されない作業など、少なからずあるとは思うが、薬剤師の知人の話を聞いていて、極めてアホらしい作業の筆頭が「除包作業」だ。
除包作業とは、PTPシート(左の写真)から錠剤・カプセルを取り出す作業のことで、1日にこの作業を続けていると、腱鞘炎になってしまう人もいるらしい。
そもそも、せっかくシートに包装されているものを取り出さなければいけないのか。これには「一包化」という仕組みが大きく関係している。一包化は、服用時期(朝食前とか、寝る前とか)が同じ薬を、まとめて一つの包みにしてあげることで、例えば、1回に3種類の薬を飲まなければならない人にとって、飲み忘れを防いだり、1回で飲む錠数間違いを防いだりすることができる、ありがたい仕組みである。
この一包化作業のために、さきほどの除包作業が発生しているのだ。手で1錠、1錠出しているのだ。まさか薬剤師がこんなことをしているなんて・・・。(間違いが許されない点を除けば、子供にそら豆の皮をむかせたりするのと同レベル。もちろん、その間違いが許されない点が最重要なのだが)
さすがに、この単純作業、自動化しないわけはなく、こんな機械も売られている(http://www.nyk.gr.jp/product/01_01_06.html →リンク切れのため別サイト紹介 PTP除包機 パラスター : 中洲電機株式会社)。そして、一包化の作業まで自動になったこんな機械も登場している(キャノンライフケアソリューションズ 錠剤供給ユニット E-DROP http://www.canon-lcs.co.jp/service/machine-healthcare/pharmacy/lineup/e-drop/top.html)。この機械の紹介サイトでは、動画もあるので、興味があればぜひ。
このような涙ぐましい作業をしていては、正直「夢のある」仕事とはとても思えない。さらには、この一包化の作業、薬剤師の無料奉仕ではなく、しっかりとその対価が支払われている。こういった医療の質の向上には、必要と思われる費用の負担は致し方ないと考えるべきだと思うが、これらの作業を薬剤師がやらなくてもよいのでは・・・と思ってしまう。医療費の増大は、今後ますます厳しくなることが確実であり、また高齢者が増えることは、服薬のミスを防ぐといった質の向上の重要性も増してくる。そのような中で、薬剤師の作業も有資格者と無資格者の作業の境界線を明確にし、質の向上と経済的な効率性の両立を追求していくべきではないだろうか。
規模の小さいところから大きいところまで全薬局がこのような機械を導入することが、その唯一の答えではないと思う。無資格者の活用など、自由な発想ができるような規制・規則の改訂と、さらにその改訂とあわせ、現状において実態の不透明な無資格者の調剤作業を厳しく取り締まる制度も設けるべきではないだろうか。調剤の質の向上と、財政的な効率化に対するインセンティブを与えることが「夢のある」薬剤師へのひとつの道だと思う。(もうひとつの道は、服薬指導への期待)