患者QOL評価指標についての方向性を確認する非常に重要な回であったと思う。これまで、国民にとって幸せに繋がっているという確信を持ち、医療技術の進歩と医療者の努力によって歩んできたがん医療は、医療者の視点において着実に進歩してきた。とは言っても、難治性のがんがあったり、個々にフォーカスをあてれば、治療もむなしく若くして亡くなる人もいたり、化学療法で副作用に苦しむ人もいたりする。
そんな中で、今回の協議会で推進することが決まった患者QOL評価指標は、患者視点での評価をし、それを社会にフィードバックすることで、今後、医療は医療者視点と患者視点の両輪で改善を進めていくことになるだろう。また、この協議会での議論は、患者団体の委員からの積極的な意見が反映されていることも大きな意義がある。
すでに患者満足度調査をしている医療機関は多いが、ここまで踏み込んだ形で患者受療経験・体験を評価することはしていないのではないだろうか。これは患者や患者家族の心情を配慮したり、患者と医療者との関係性に配慮したりする結果、踏み込めないと判断する医療機関もあるはずだ。それだけに協議会でも、慎重に進めるべき、配慮すべきといった意見も多く出ていた点は、現在、医療機関が行なっている調査でも参考にすべきだろう。
協議会の最後、門田先生がある委員の言葉を借りながら「量から質へ」と総括されていた。これまで、がん医療は治療件数、手術件数といった医療の提供量・ボリュームによって、拠点病院に認定され手厚い支援がなされてきた。病院の数が8,000以上もある日本において、拠点病院の指定は病院間の連携体制の構築や症例の集積化に貢献していることは間違いない。しかし拠点病院間での診療レベルのばらつきが指摘されたり、件数の評価では十分でないことも事実だろう。また、小児がんや希少がんのように集積化が十分でないがんがあることも課題のひとつである。そのため、質的な評価・改善目標を打ち立てることは、今後のがん医療の進歩に必要不可欠である。これががん対策における「量から質へ」の転換であり、がん医療のみならず他の医療も同様であると思うが、まずは重点的にがんから取り組む、ということであろう。
なお、患者団体の委員が指摘していた点に「教育」があった。質の向上には患者教育も重要であり、どういった内容をどのようなタイミングで教えるかということは、今後大きなテーマになるだろう。教育は知識だけでなく死生観のような道徳的・宗教的な要素も絡んでくるだけに、単純ではないと思うが大切である。ちょうど今月は大腸がんを良く知ろうというキャンペーン「ブルーリボンキャラバン」が行われていた。こういった取り組みも益々活発になっていくであろう。参加する、興味をもつといった誰でも簡単にできることから取り組んでいくべきかもしれない。