2014/05/09

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第2回)

まず、仮説を考える前に、課題を明確にしておこう。

課題: 虫歯のある子どもの割合が高いこと

課題の原因、なぜ虫歯のある子どもの割合が高いのか考えることで、どういった取り組みをすれば、虫歯のある子どもが減るか。原因が分かれば、より効果的な施策が展開できる。

さて、仮説を考えてみよう。思いつきで3つ挙げた。

仮説1: 甘い物、お菓子が大好きだから、虫歯が多くなってしまう(原因が多い)
仮説2: 歯医者の数が少ないから、虫歯が放置されてしまう(対策が十分でない)
仮説3: 親のしつけの問題では(仕組みがうまくいっていない)

「虫歯」という事象に対し、原因、対策、仕組み、という3つのアプローチに整理した。仮説1は、虫歯を作る原因がなければ、そもそも虫歯にならないはず、と考えている。仮説2は、歯医者が多ければ、仮に虫歯になっても治療されるはず、とした。仮説3は、虫歯が悪いこと・いけないこと、というようなしつけのレベル、そもそもの仕組みが原因ではないか、と考えた。

仮説1は、お菓子としたが、チョコレートの方がいいかもしれないし、清涼飲料水の方がいいかもしれないが、細かなことは分からないので、お菓子とした。また、仮説2は、歯医者の数よりも、歯科検診の実施状況などが大事なのでは?という考え方もあるが、学校で歯科検診が毎年なされていることを考慮し、仮説には入れなかった。

要は、挙げれば、きりがないかもしれないが、これが重要な要素なのでは?というものを、主観により、3つの観点についてそれぞれ1つずつ挙げた。

では、ビッグデータ時代であっても、従来からの色褪せない手法で、上記3つの仮説を検証してこう。(※本シリーズでは簡易な分析で考え方を示すため、EXCELを使った手法で説明する)

仮説1: 甘い物、お菓子が大好きだから、虫歯が多くなってしまう(原因が多い)



菓子類 世帯支出金額と未治療歯のある者(12歳)の割合との関係性
出所: 家計調査 2014年3月次、文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

世帯あたりの支出金額との関係性を見ると、ほとんど相関が見られない。これでは「お菓子をたくさん食べているから虫歯になるんだよ」と言ったところで、誰も納得してくれないだろう。



仮説2: 歯医者の数が少ないから、虫歯が放置されてしまう(対策が十分でない)



歯科医師数と未治療歯のある者(12歳)の割合との関係性
出所: 平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

人口10万人あたりの歯科医師数との関係性では、負の相関(歯科医が多いと虫歯が少ない)が少しあるように見受けられる。強い相関ではないものの、都道府県別のざくっとしたレベルでも多少傾向が見えることから、統計的な検証を無視して、とりあえずの報告レベルならば、聞く人も「へぇー」となるかもしれない。でも、じゃ、市町村別でも同じことが言える?とか、歯科クリニックの数は関係ないの?といった関連する質問が飛び交うに違いない。


仮説3: 親のしつけの問題では(仕組みがうまくいっていない)

仮説3は少々乱暴かもしれないが、『親のしつけ』を定量的に評価できる項目が見当たらないので、親の学歴(高校での進学率)で比較してみることにした。この仮説3の検証と、3つの仮説検証の結果から考えられることについては、次回、紹介したい。(第3回に続く)