2014/05/15

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第5回)

虫歯の人を減らす取り組みは「低所得世帯・ひとり親世帯に積極的な支援策を展開すべき」ではないだろうか、ということを前回までにデータを示しながら考えてきた。

そこで、この内容を上司なり、クライアントなりに、報告したと仮定しよう。すると、突然、聞いていた上司・クライアントが放つ素朴な疑問に焦ることになる。


「ひとり親世帯って、最近増えてきているのでは? それなのに虫歯の人は減っているんだから、矛盾してない??」


確かに虫歯のある人は減ってきている。昭和50年台から年々減少していることは下のグラフから明らかだ。
虫歯のある者割合の年次推移(小学生)
出所:文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成


では母子世帯・父子世帯(国勢調査でいうところの母子世帯・父子世帯は「未婚,死別又は離別の女親(男親)と,その未婚の20歳未満の子供のみから成る一般世帯」のこと)の推移と、未処置歯のあるものの割合の推移をそれぞれ左右の軸にとり、一緒にグラフにしてみた。


「確かに矛盾してました!! 母子・父子世帯が増えると虫歯は減ります!!」


出所: 平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成
このグラフだけ見て、解釈を誤れば、上司・クライアントが矛盾を指摘したとおり、母子・父子世帯が増えると虫歯が減る、と結論付けたくなる。しかし、これは危険だ。

なぜ危険なのか。分析の落とし穴に落ちてしまった点について、次回(第6回)で考えてみよう。