2014/05/16

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第6回)

前回、第5回で落ちてしまった落とし穴は、下の2つのグラフの解釈だ。
出所:平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成
出所:平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

都道府県別に見た虫歯(未処置歯)のある割合はひとり親世帯の比率と相関性があると見た一方で、下のグラフのように未処置歯のある割合が年々減少しているのに母子・父子世帯数は増えている、という一見矛盾している2つの事象だ。

ここで考えるべき点は、「相関があるからといって、因果があるか」ということだ。

ここからは、頭の体操になってくるが、下の喫煙率と肺がんの話にエッセンスが詰め込まれている。

《18》 喫煙率が下がっているのに肺がんが増えている? - 内科医・酒井健司の医心電信 - アピタル(医療・健康)

この記事の中で引用されているJTのウェブサイトでは、喫煙と肺がんは関係ない、と主張しているようにも受け取れかねない内容だ。しかし、記事でも論じられているとおり、喫煙者と非喫煙者の群でそれぞれ評価しないと判断できない。JTの理論は暴論といっても過言ではない(JTの事業内容ゆえ致し方ない主張と理解すべきか)。

同じことが、今回の虫歯にも言える。時系列データである虫歯の減少について、母子・父子世帯の増加だけが因果であるというような認識の仕方は危ない。この20数年間には、社会的な変化や、医療技術の変化、様々な環境の変化が生じている。それらの話に一切触れず、特定の事象を取り上げ、相関関係から、因果に結びつけることはかなり危険だ。

では、最初のグラフに戻って、都道府県格差はなぜ生じているのか考えよう。仮に医療技術の展開状況も含めた社会環境が全国同一とするならば、ひとり親世帯の影響は、要因のひとつと考えても良いかもしれない。そこで必要になってくるのが、虫歯を減らすことに貢献している社会環境に関する分析だ(バイアスの評価)。次回、この点について、考えてみたい。