医療の質を向上させるには、ある程度の施設集約が必要だろう。また医療の効率性を上げる意味でも、施設集約は重要だ。年に数回しか使わない手術器具を全国の病院が保持するよりも、年数百回使用する病院だけが保持した方が効率的だ。
同じ医療を日本全国津々浦々どこでも受けられる、ということを期待するのは、質や効率性を犠牲にしている可能性が高い。
また、日本は超高齢化社会に突入し、地域によっては人口減少が深刻化してくる。ますます全国一律の医療を期待することは現実的でない(もしくは大きな費用負担を伴うだろう)。
そこで日本の医療は集約傾向にあるか否かをデータから考えてみたい。まず取り上げてみたのは乳がんだ。乳がんは手術が必要なタイミングでは元気なことが多く、ある程度の移動が可能であるため、じっくり時間をかけ、広域から病院を選択しやすいという特徴がある。逆の性質の代表的な疾患は脳梗塞で、じっくり時間をかけた病院選択はほぼ不可能だ。
乳がんの手術件数が上位10病院、20病院、30病院、50病院、100病院の合計件数が全体で占める割合について、平成21年から24年までの推移を見てみた(下のグラフ)。
乳がん手術症例 件数上位施設の症例占有率推移(画像をクリックすると拡大します) 出所: 厚生労働省 DPC導入の影響評価に関する調査結果及び評価 報告資料を基に作成 |
すると、TOP10は年々シェアを拡大している。また、上位100位までの施設のシェアも同様だ。つまり、これは集約化が進んでいることを示唆しているかもしれない。
乳がん手術症例 ハーフィンダール指数推移(画像をクリックすると拡大します) 出所: 厚生労働省 DPC導入の影響評価に関する調査結果及び評価 報告資料を基に作成 |
さらに、集約状況を評価する指標として、ハーフィンダール指数(※)を算出してみたところ、年々集約が進んでいる様子が見えてきた。
※ハーフィンダール指数については、wikipediaを参照いただきたい(ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックス - Wikipedia)
医療の集約化が進んでいるかどうか判断するのは、あまりにも少ない情報かもしれないが、このように集約しているか否か、判断する上で参考になる情報が公開されていることは事実である。今後、継続的にこのような情報の可視化を行ってみたいと思う。