今朝の日経産業新聞にも同内容の記事があったのだが、上條社長のコメントは非常に的確に市場を見ていると思う。
以下、記事引用。
――保険適用を巡っては、費用対効果の観点から懐疑論もあります。
「我々は全ての手術をダヴィンチでやる必要があるとは考えていない。経済的に効果のある症例で使うべきだ。どこの病院にも入れるのではなく、急性期医療を行う、数でいえば250病院ぐらいに集中した方がいいと考えている」
ここまで引用。
ダヴィンチを導入すべき病院は250程度だと。 ただ、記者のコメントだろうか、手術件数から換算すると400~500台は見込める・・・と書いていて、矛盾している。おそらく、インテュイティブサージカルの日本法人は冷静にマーケットを判断しているということだろう。
記事では保険適用の話や、医師の話も出ているのだが、「ダヴィンチは高い」とある。値引きした背景も、その理由が大きいという。しかし、保険者からしてみれば、今まで100万円で済んでいた手術を、単に新しい機械を使うから150万円でお願いします、という類の話は受け入れがたい。
受け入れてもらうには、病院側のコストにおいて、
通常: 100万円(手術代)+50万円(入院代) =150万円(合計)
ダヴィンチ: 150万円(手術代)+30万円(入院代) =180万円(合計)
ダヴィンチを使うと20万円入院代が安くなるのだから、その分、手術は100万円→120万円にアップしてくれないか?という提案だ。
もしくは、通常の手術に比べダヴィンチを使うと、圧倒的に治りが良い、再発が少ない、といった価値向上を認められる場合だ。
これらのエビデンスが十分でなかったために、これまで保険適用が進んでいないと理解すべきだろう。
今回の見直しで、価格はアメリカの1.35倍に、ヨーロッパよりは少し安く設定できたとのこと。価格の引き下げにより、導入病院が増え、エビデンスを蓄積できれば、保険適用に向けた道も開けるだろう。
(個人的には、手術料は通常と同じでまず機械だけ認めて、その後、エビデンスを積み上げていく方が良いと思う。)
なお、ダヴィンチ、日本は導入されても、年間の稼働件数が非常に少ないらしい(日本は年42件(週1件未満)。世界平均は年151件)。とある病院で、泌尿器科以外のドクターからの反応が非常に冷たかったことを思い出した。保険適用の手術が少ないタイミングで、公立の病院までもが導入している状況は、冷静な判断ができているのか、非常に疑問を感じる。値下げにより、冷静さを失う医療機関が続出しないことを祈りたい。