前編・中編にて、治癒率の低下が問題かどうかの議論の前に、治癒率の高い疾患と低い疾患があることを説明した。
3回シリーズの最後、後編では、疾患別に見た時に治癒率が下がっているものにフォーカスしてみたい。
治癒率が前年に比べ下がった疾患TOP5 ※症例数10,000件以上を対象 (クリックすると拡大されます) 出所: 厚生労働省 2013年度DPC公開データ(2014/9公開)を基に分析・作成 |
白内障、喘息、体液量減少症の順となった。
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白内障であれば、術後フォローが必要なくなるまで入院させていた病院が減ったということか?? もしそうであれば、在院日数短縮と治癒率の低下は、無駄な入院を減らし、効率的な病床利用になっていると言えるのではないだろうか。つまり、治癒率の低下は、適切な方向に動いている可能性が見えてきた。
喘息はどうだろう。入院している喘息患者が、そもそも完治すること自体、おかしくないだろうか。喘息は発作が治まったところで、気道の炎症は続いているわけで、退院後も継続的に服薬等の治療を行う必要があるはずだ。つまり、「治癒」の不適切な選択が是正されている可能性が見えてきた。
体液量減少症はどうだろう。高齢者の脱水が主な病態イメージだろう。急性期の一時を脱した患者は、DPC病院に入院している必要性が低い。つまり、治癒の見込みが見えてきたら、しっかりケア・フォローできる施設や自宅に退院させた、なんていうことはないだろうか。つまり、治癒率の低下は、効率的な病床利用を徹底した可能性が見えてきた。
このように疾患別に見ることで、『治癒率の低下』というネガティブな印象を持つ言葉は、実はポジティブな意味合いを含んでいることが示唆された。
在院日数の短縮との評価は、疾患別・施設別のデータ(在院日数と治癒率)が必要ゆえ、これ以上の評価はできない。しかし、中医協の議論の場で、治癒率が下がったことを指摘され、持ち帰りの検討事項にしてしまったことは少しお粗末ではないだろうか。毎回、いかに密度の濃い議論をするかは、回数と時間が限られた場において重要なことだろう。 (3回シリーズ、終わり)
治癒率の減少はDPCの弊害か!?(前編)
治癒率の減少はDPCの弊害か!?(中編)