2014/10/09

生活習慣病用薬のスイッチOTC、売る気はあるのか?

2013年4月に大正製薬と日水製薬の2社から発売開始されたエパデールのスイッチOTC。2014年9月、その片方である日水製薬のエパアルテがひっそりと姿を消した。

【日水製薬】「エパアルテ」が販売中止‐登録難航で断念 : 薬事日報ウェブサイト
姿を消した理由は、適正使用調査の150例の確保が難航したとのこと。要は売れなかったということだろう。

スイッチOTCが増える(市場が活性化する) ≒ 医師の処方に頼らないセルフメディケーションの拡大・推進 ではないのか?

セルフメディケーションを拡大したい薬局側は、なぜスイッチOTCを売ろうとしないのだろうか。ロキソニンなどの鎮痛剤や、アレグラのようなアレルギー薬と違って、エパデールは難しかったのだろうか。正直なところ、これだけ『売れない』という結果が出てしまったことは、セルフメディケーションの推進に大きな問題を抱えているような気がしてならない。

薬剤師の意識、消費者の意識、薬剤の値段。どれが原因なのか。原因を追求することは難しいのだが、ひとつ有力な仮説がある。

仮説: 製薬メーカーは健康食品で売った方が楽だ

日水製薬の親会社のニッスイは、イマークSの販売を大プッシュしている。正直、負担の大きいOTCの領域で戦うより、健康食品で売った方が楽で儲かる、ということなのではないだろうか。

イマークS:ニッスイ

サントリーは高額の宣伝広告費を割いているらしいことは、このブログでも取り上げてきたし、朝日新聞の広告費について調査・言及したインターネットサイトでも検証されている(朝日新聞広告出稿ランキング 推定料金ベース(9月) | 朝日新聞広告出稿ランキング)。

はっきりとした毎日??? - 医療、福祉に貢献するために
書評: 週刊 東洋経済 2013年 11/30号 特集「サプリ、トクホの嘘と本当」 - 医療、福祉に貢献するために

仮説としては、以下のような流れになる。

メーカー側はさしてOTCを売る気もない
⇒ドラッグストアや薬局は目玉になるOTCが欲しく、メーカーに依頼
⇒しぶしぶメーカーは『ドラッグストアでたくさん売ってくれるなら作らないでもない』と承諾
⇒ドラッグストアではさっぱり売れない
⇒やっぱり健康食品で売ったほうがいいや

本来であれば、薬剤師が積極的に売り、『健康食品で売るよりも、ドラッグストア経由で売った方がおいしい』とメーカーに思わせるべきだった。

しかし、値段や消費者の意識の問題もあり、さっぱり売れない状況を作ってしまった。本来であれば、血液検査などの患者個人の状態の把握と、服薬も含めた治療の選択は、薬剤師が介入したい領域だったはずだ。介入できる余地が大きいだけに、エパデールは是が非でも成功させておくべき薬剤だったのではないだろうか。

正直、患者はエパアルテの話など知らない。今日も新聞やインターネット、テレビで放映される健康食品のコマーシャルや広告を見て、せっせと健康食品のEPA製品を買うに違いない。膨大な広告の前に薬剤師は無力なのか。できることを考えるべきだ。

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