2013/10/02

毎月払う保険料を意識するには(後半)

前半からの続き)

保険制度を維持するために取り得る5つの策のうち、以下の2つについて深く考えてみたい。
  1. 保険料をあげる
  2. 自己負担割合をあげる

■報酬連動制と公平な医療は日本の良い制度

日本の健康保険は報酬と連動して保険料が徴収される。たくさん払ったからといっても、良い医療が受けられるわけでなく、あまり払っていないからと言って、医療の内容が悪くなったり、制約を受けることはない。これは世界に誇る日本の非常に良い制度だ。

さらに日本には高額療養費の制度がある。これについては患者負担の上限の見直しが入るかもしれないが、医療を皆が受けられるための良い扶助制度だ。

朝日新聞デジタル:患者負担の上限見直しへ 厚労省案、高所得なら7割増に - 政治

■健康維持・増進に対するモチベーション向上に繋がっていない保険料の”重み”

保険制度が非常に良い反面、払うことに対する認識が弱い。

以前、麻生副総理は医療費負担について「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで、糖尿病になって病院に入っているやつの医療費はおれたちが払っている。公平ではない。無性に腹が立つ」「生まれつき体が弱いとか、けがをしたとかは別の話だ」と述べ、問題となった。

医療費の負担が公平のように見えて、実は公平ではないという根が深い問題の本質をついた発言だと思う。(マスコミが言葉尻を捉えて失言だと言いたい気持ちも分からなくはないが、健全な議論をする気概が感じられないことは残念だ)

保険料の重みがしっかりと感じられているならば、麻生副総理の言う「公平ではない」という主張も納得感が高いはずだ。

自助努力で健康維持・増進につながる行動を取っている人は保険料を維持し、そうでない人(例えば、喫煙者や太り過ぎ、運動しない人など)は保険料をあげてみてはどうだろうか。消費税が5%から8%に上がると聞いて、えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!と騒いでいるように、保険料があがると聞けば、少しは健康増進に気が向くのではないだろうか。

■自己負担、3割固定ではなく、5割、10割の選択肢を

3割負担で固定してはいけない。当たり前の意識が芽生え、保険料に対する”重み”が麻痺してしまう。例えば、健康増進に力を入れ、自信がある人であれば、風邪は10割負担となる代わりに保険料が5%下がる、ドラッグストアで売っている薬は処方されない代わりに保険料が10%下がる、といった選択肢が出てきたらどうだろうか。逆もあり得る。健康に自信がない人は、風邪でも3割負担で良いが、保険料は10%あがる、などだ。

今は風邪や市販薬もある薬の処方を例に挙げたのは、がんや骨折などコントロールしにくい疾患は選択次第で患者を不幸にしかねないので、そういった対象にしてはいけない。

このような制度は、非喫煙者割引があったりする民間医療保険では当たり前のことだ。

保険料の意識が高まるということは、結果的に、医療機関に行く危機感が高まり、リスクマネジメント・健康増進に積極的になるはずだ。Health2.0の講演を聞きながら、ふと、そんなことを考えた。

Health 2.0 Fall Conference 2013 - Health 2.0 Events and Conferences